蜜柑とアイスの共存

骨の髄まで


――ふっと。ぷつっと途切れていたものが繋がった。なにっていうと、おれの意識なんだけど。
声になるかならないかぐらいの音量で鳴くと、おはよう、と金色の瞳が微笑んだ。
その瞬間、なんでおれは意識を飛ばしていたのか、思い出す。
「っあ、ぁ、あ、あ」
「うん、気持ちいいな、気持ちよくなれてえらいな、」
きゅうぅ、とおれの胎の中が締まる。そこにはダンデのものが入っていて、締まれば締まるほど彼のものの形がありありとわかる。おれの前立腺がごりごりと潰されて、暗い室内にも関わらずチカチカと視界が白む。ちがう。自分で潰しているようなものだ。自分の胎を収縮させて、自分で気持ちよくなって。ダンデのちんこ使って、オナニーしてるみたいなものだ。だって、その証拠に、いまダンデは全く腰を動かしていない。
たぶん、おれが目覚めるまでそのままで待っていたんだと思う。ダンデだって、おれが気を失ってる間におれのことを抱いて、自分の好きに腰を振って、自分の気持ちよさだけを追求することだってできたのに。でも、彼はそれをしない。それに対しておれは、浅ましい身体は、どんどんと快楽の深みにはまっていく。
「ぅあ、あ、ダンデ、おなか、気持ちい」
「そうだな、お前のおなかが、俺のちんこにキスしたまま離してくれないんだ。どうだ?お前はこの状態で、俺に動かれるのが好きだろう」
「っあ、だ、だめ、気持ちよすぎ、にぃ、あっ、なっちゃう、から」
ダンデが嬉しそうに笑ってる。おれの右足はダンデの肩にかかっていて、その足にわざと見せつけるようにキスをして、ちゅうって音を立てて、おれの注意を引く。
「俺はいま、いいかダメかを聞いてるんじゃない。好きかどうかを聞いてるんだよ」
「っひ、ぃあ、あ、」
「俺に動かれるのは、きらいか?」
そうやって尋ねながら、ダンデはおれの腹を撫でた。指の一本一本を意識させるように、普段の彼の触り方とは全く違う、ねっとりとした、おれが感じるのをわかっていて、より乱そうとする触り方だ。くっと指に力を入れたそこは、つい先ほどダンデが言った、おれの胎と、ダンデのちんこがキスしてる場所だ。
「ああ、あ、ああ」
どれだけ深く、ダンデがおれの身体を暴いているのか。まざまざと見せつけられて、快楽のうずに飲み込まれていく。ずっと軽イキしっぱなしのおれの身体は、ひっきりなしに甘えた声を発してしまう。
「教えてくれ、俺に動かれるのはきらいか?」
ずっとイってるのに、わかってるのに、ダンデは聞いてくる。これに頷いたら、ダンデは絶対に動いてしまう。わかっている。わかっているし、期待してる。動いて欲しい。おれをめちゃくちゃにしてほしい。おれが嫌だって言っても、さっきみたいに気絶しても、ずっとダンデの好きなように動かしてほしい。そうされるのを一瞬でも想像してしまえば、もうダメだった。
「す、好き、ぃ……動いて、ダンデに、ずこずこ、されるの、好き……っあ!あ、あっ、……~っ!!!!」
ダメだ。おれが言うや否やダンデはとん、と腰を動かした。バキバキに勃起したちんこで、もっと思いっきり打ち付けてもよかったのに。一瞬おれの胎からダンデのちんこが離れて、その次の瞬間もう一度吸い付く。ダンデは、とことんおれをダメにするつもりだ。
「っ……~~、っっ、!!」
「そうだな、気持ちいいなあ、でも、息はきちんとしないとダメなんだぜ」
トサキントのように口をパクパクさせたおれにダンデはキスをした。ああ、ちんこじゃなくて、マウスの、口の方。かろうじて酸素は取り込めたような気がするけど、完全にアクメに嵌って、頭の中も身体の中もぐちゃぐちゃにされて、おれはなにも言えない。返せない。おれのちんこも完全に勃起していて、さっきまでカウパーが亀頭を濡らしていたくせに、いまはどれだけイっても少しも性液が出る気配はない。完全にドライでイかされてる。 「ほら、もう少し動くな。ぬるぬる〜ってして、気持ちいいだろ?」
ゆるいストロークで、ダンデはおれの孔ギリギリまで引き抜いて、カリ首をわざと縁にひっかけて、もう一度縁に引っ掛けながら挿入する。元々刺さっていた場所に行き着くまで、もうおれの中は全部が性感帯みたいなものなんだけど、その中でも一際敏感な場所を、ひとつずつ丁寧に潰されていく。
「っあ、ああ、あ、あっ、あっ」
それしか言えない。意味のある言葉なんて繋げられなくて、気持ちいいですってことしかわからないと思う。ああ、でも、おれたちはえっちしてるんだから、それがわかればいいのかもしれない。
それからしばらくゆっくりした挿入を繰り返して、おれの声が次第に掠れて、もはやすすり泣きみたいなのが混ざってきたぐらいの頃。必死にシーツを握る手にダンデの手が重なる。あ、たぶん、これはダンデが今から動きますよっていう合図だ。おれのためだけに動いてた時間はここまでで、これからはダンデが気持ち良くなるために動きますよっていう、合図だ。そうなっても、限界まで蕩かされてダメにされたおれは、気持ちいいことしかわかんなくなるから、これまでと変わらないと言えば変わらないんだけど。
でも、やっぱり、ギリギリまで我慢してたダンデが、それまでの優しい眼差しから、ギラついた瞳になるのは、骨まで蕩かされて食べられている気分になって、おれにとっては猛毒だ。ダンデに好きに動かれるのは、おれがダメになってしまうし、なにより、そうされるのが大好きだから。
はふはふ息も絶え絶えなおれの口にちゅうをしたダンデが、ひたりとおれを見つめる。もうすっかり溶けてしまってこれ以上感じる余地などないはずの背筋に、甘い刺激が波紋のように広がった。


2020/01/03


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