蜜柑とアイスの共存

蜜事

「んっ……ぅあ、プロデューサー……いたく、ない……か?」
「俺は問題ない……春名こそ、大丈夫か。……お前の方が負担はでかいんだから」
「うん、大丈夫、っだよ、……ぁ、ま、まって、やっぱ、もーちょっと、ゆっくりに、」
「……ああ、お前の好きなように、動け」
 汗で頬に張り付いた髪をよけられ、頬を指先で撫でられた。春名はその愛撫にへにゃりと眉を下げ、その手に擦り寄りながら呼吸を整える。
 春名は寝そべっている環に跨った。
 逸る気持ちで熱を持ったそれに指を添え、足の力をいていく。
 確かな圧迫感と普段覚えることはまずない、身体の内側に何かが入ってくる、という違和感に、春名はこれ以上ない充足感を得ていた。

 騎乗位で試してみよう、と提案したのは環だった。初めての行為においてはお互いの負担は極力減らした方が勿論良い。特に、受け入れる側の春名への気遣いは過剰だと感じるほどだった。
 しかし春名はそれを気遣いすぎだとはっきりいうには知識と経験が足りていなかったし、大切にされているのだとより一層感じることに悪い気などしないので、結局はむずがゆさにはにかみながら、環の提案にうなずいたのだ。
 実際のところ騎乗位であれば春名のタイミングで受け入れることができるし、身体の重みで挿入しやすくなる。
 小さく声を漏らしながらも、入念に準備をしてきたことで思ったよりは順調に飲み込むことができた。
 痛くはないか、苦しくはないかと何度も聞いては慰めるように頬を撫でる環に頷きを返し腰を落としていく。
「ぁ……あ、……った、ぜんぶ、入ったよ、……プロデューサー」
 顔を綻ばせて喜ぶさまは幼げなのに、その表情としている行為はとても子供のするものではない。
 繋がったまま身体を折り、顔を寄せる春名に環は答える。軽く唇を食んでぺろり舐めればうっすらとしょっぱい味がした。
 プロデューサー、吐息交じりに急かされ、舌を絡めた。挿れているのは環とはいえ、上に乗っているのは春名。主導権は春名にあるはずだがキスを求める姿が愛おしい。
「春名、春名…」
「プロデューサー、んん、……っふ、……へへ、オレ、いま、スゲー幸せ……」
「俺もだよ。……苦しくないか?」
「ヘーキだって、……あのな、やっぱ落ち着かない感じはするんだけど、プロデューサーがオレの中にいるんだって思うと、落ち着かないのも、うれしくって、あ、んぅ……っ……いまちょっと、おっきくなったろ……?」
「おま……お前が、そんな……っ、反則……」
「……へへ」
 蕩けるような笑顔で春名は環にキスを落とした。息も落ち着き、動いていい?尋ねると環は頷く。
 彼の胸に両手をつき、膝に力を入れて小刻みに挿入を繰り返す。胸側でなく足側に手をつき出し入れをするという方法もあるが、環の顔が見られる方がいい、と春名は言った。
 緩やかなグラインド。初めは異物感が強かったが、徐々に身体の内側を擦れる感覚に、背筋や腰にかけて確かな痺れを生み出していた。
 荒い呼吸音。涙でぼんやりとにじむ視界では環の表情が見られない。だが、優しく何度も名前を呼ばれるほどに頭の中がぐずぐずに溶けていってしまうのがわかる。
「プロデューサー……、プロ、デューサー……すきっ……好きぃ……っ」
 頬に触れる手と、春名自身が触れている環の身体。それらにすがりつきながら、まるでうわごとのように繰り返す。すると環はたまらずといった風に下から腰を突き上げ、その衝撃は春名の身体を駆け巡り嬌声へと変わる。
 目尻に溜まった涙がぽろりと溢れた。
「あ、あ、あ、だめ、プロデュ、さっあっ……、まっ」
「オレも、っ好きだ、春名、春名」
「な、ぁ……だめ、っひぁ、あ」
 熱のこもった声でそんなことをささやかれてはたまらない。下から揺さぶられながら快感に身体を震わせた春名はひときわ高い嬌声を上げ、環の腹へと白濁を吐き出した。
 春名が達したことにより締め付けられた環もほぼ同時に果て、疲れたのだろうしなだれかかる春名の背中に手を回しながら、荒んだ息をゆっくりと整えていった。
「……ね、プロデューサー、もっかい」
 とろけた瞳でそうねだられては、環も否と答えることはできない。
 もう少しまて、と答えると、彼は少し口角を上げて「ちょっと時間いる?りょーかい」とにやり笑った。



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