蜜柑とアイスの共存

09

「これからキセキ会議inファミレスを始めようと思う」
「異議有り」
「勿論却下だ」
「WC終わったと思ったらこれですか」
「俺は暇ではないのだよ……」
「でもでも! 俺は皆に会えて嬉しいっスよ!」
「オレも赤ちんに会いたかったしー」
「そうか、僕もお前達に会いたかった。大輝は写真集を見るのを止めろ」
「マイちゃんかわいすぎてやべぇ」
「小豆澤先輩から赤司君と仲直りしたというメールが送られてきたんですが結局どういうことなんですか?」
「えっ黒子っち小豆先輩のメアド知ってんスか! ?」
「はい、学校そんなに遠くないのでちょいちょい練習試合もしますし」
「ずるい教えて!」
「個人情報なので」
「じゃぁ小豆先輩に聞いといてほしいっス!」
「まぁそれぐらいなら。赤司君ご存知ですか? 先輩文章だと顔文字使うんですよ」
「先日アドレスを交換した時に彼から一度メールのやり取りをしたから知っている」
「中学の時はアズちん携帯持ってなかったもんねー」
「俺はメールの顔文字もそうだが中学の時とのギャップに驚きなのだよ」
「え、小豆サンとずっと話してねぇけどそんなキャラちげぇの?」
「最初はすこし丸く? なんかほわほわーってなったなって思ってたんスけど、ってかチームの人と一緒にいるとよく笑ってたっス」
「メールだとそれが顕著になります。何方からメールが来ているのかと何度も確認してしまいましたし」
「んー、俺もアズちんと最近喋ってないから解んないんだけどさぁ、この前黄瀬ちんと居たの見たけど、あんま変わってないって思ったよ?」
「そうなんスよぉ! オレと、っていうかオレらだったんスけど、居るときだけ笑顔じゃなくなるから、笑うっちゃ笑うんスけどもしかしてオレ嫌われた! ? って思ったんスよ! オレにだけ態度違うから!」
「で、黄瀬君がその嫌われたかもしれない相手に泣きついてめでたく誤解は解けたんでしたっけ」
「そっス! オレのこと嫌いになったんスか! ? って聞いたら、びっくりした顔して、それからそんな訳ないだろって頭撫でてもらったんスよー! もー先輩かっこいいっス! そのあとはほわほわ、って感じで笑っ「涼太」はいっス!」
「お前、佑さんに頭を撫でられたのか……?」
「え、はい……そっスけど、……え? 赤司っち、佑さんって?」
「赤司がさん付け……」
「つーか下の名前でかよ」
「赤ちん流石ー」
「それは何が流石なんですか紫原君。赤司君、その呼び方のシフトチェンジは仲直りに関係してますよね?」
「流石はテツヤだ鋭いな。というかそもそもお前達を呼んだのは事の顛末を語ろうと思ってのことだ。同輩で一番巻き込んだのはお前達だし、僕は当時何も言う気がなかったし、お前達には聞く権利があると思ってな」
「あの時のお前はその話題に触れようものならそのまま射殺さん勢いだったのだよ」
「まぁ過去のことだと思って適当に流してくれ。……さて、どこから話したものか……」



「……とまぁ、結局は僕の一人芝居。周りを多大に巻き込んだ唯の道化だったという訳さ」
「……」
「赤司君が自分でそう言ってしまったので、僕らの言いようがありません」
「したことの自覚はしているよ。彼に礼を述べられた時は本当に訳がわからなかったけどね」
「……ぷ、プラマイゼロってことで……いいんじゃないスか?」
「つーか小豆サン耳いいじゃんかよ。後ろから誰かきたかとかわかんのに何でそんときだけ気付かねぇんだ」
「ああ、部室の時は物を落としていたし、先程は一緒にいた、帝光出身の先輩が空き缶を投げていたから耳を塞いでたりしたんじゃないのか?」
「……赤司も、小豆澤さんも、この上なくタイミングが悪すぎるのだよ。もっと人事を尽くすべきだ」
「でも、アズちんと誤解しないで赤ちんが主将になってたらどうなったの?」
「その辺りはどうなのだろうね。今回の件で帝光時代以上の関係になったとは思っているし、……彼が言っていたのだから、結果オーライとするべきなんだろう。きっと」
「……珍しく殊勝な態度ですね、赤司君」
「……しばらく離れている内に随分と図太くなったね」
「ええまぁお陰様で。誰が態々一年もかけて長引いた厨二病を更生したと思ってるんですか? しかも五人分も本当ありがたくて涙がでますね」
「それに関してはすまないと思っている」
「ごめんなさいっス」
「……悪ぃ、テツには感謝してる」
「……以前とは心持ちが変わらないでもないのだよ」
「……室ちんとのバスケは、つまんない訳じゃねーし」
「……まぁ、僕としては君達とまたバスケが出来ればそれで言い訳ですが。―――ところで赤司君。話を聞いていて思ったんですが」
「何だ」
「君は本当に小豆澤先輩のことが大好きなんですね」
「……どういう意味だ?」
「視界から消した。ということは、意識の中には鮮明に残っていたのでは? 本当に彼が君の中でどうでもいい存在に成り下がっていたのなら、そもそもそんな表現はしないはずですし。わざわざ消す必要があるということは―――そういうことなんでしょう?」
「……」
「へー……」
「黒子っち鋭い」
「……まぁ、だからこそ1on1の勝負を持ちかけてまで主将の座を奪おうとしたんだろうな。認めるよ」
「……ほう」
「仲直りできてよかったねー」
「……あぁ。……それで、話は変わ、……ふむ。噂をすれば影が差す、ということかな。彼からメールだ。……、」
「……どうかしたのか?」
「……テツヤ、真太郎、佑さんと祥吾は今でも付き合いがあるのか?」
「どうしたんですか藪から棒に。そういった話は特に聞いていませんが」
「俺もだ。そもそも灰崎の話になどなったことなどないのだよ」
「はぁ? 何でそこでショウゴ君がでてくんスか。……まさかとは思うけど、もしかして」
「……偶然ゲームセンターで会ったらしい」
「小豆澤先輩ゲームセンターとか行くんですね」
「おいテツ、多分突っ込みどころはそこじゃねーぞ」
「ええええ! ! 嘘ぉ! ! ! ショウゴ君高校デビューかっこばくしょうで見た目超変わってんのに! 髪も黒くなってたし! 何で解るんすか! ? もしかして中学卒業してからもショーゴ君とは交流あったとか! ? ありえねぇええ! ! !」
「ちょっと黄瀬ちん煩いんだけどー」
「中学卒業以降も交流があったかどうかは知りませんが黄瀬君と灰崎君の学校の試合見に来てましたよ」
「周りからの視線が痛いのだよ」
「まぁ元々目立ちますしね。僕以外」
「お前それ卑屈なのか?」
「涼太、ここはファミレスだ。叫びたいならば面でしろ。……この意味は、解るな?」
「……! ! はいっス! ! !」
「もしかしなくても強制参加だったりします? それ」
「当たり前だ」
「えーなになにー外でんの?」
「たりぃんだけど……」
「……ストッパーがいなければどうにもならんだろう。仕方がない」
「現在地は聞いた。今すぐ向かうぞ」

END