蜜柑とアイスの共存

閑話

青峰→緑間→桃井→灰崎→紫原→黒子→赤司

・青峰


「先輩ー!先輩!小豆先輩!」
「そんなに呼ばなくても聞こえてるから。あと敬語。どうした?」
「1on1しようぜ!」
「……ストレッチ終わったのか?」
「終わった!」
「え、早」
「小豆先輩とやりたくてソッコー終わらせてきた!」
「……でも、練習メニューがあるしなぁ……」
「部長からは許可とってきたけど……」
「まじで……っつーか、何で俺?部長の方が強いだろ。俺も1on1そんなに強いって訳じゃねぇし」
「部長はこの前負かした」
「……まじで……」
「あと!先輩に本気出させるからな!俺!」
「本気?」
「目ぇ閉じるやつ!なんであんなんでバスケできるんだよ、ほんと……」
「あー、……いや、あれはまだまだ使えるレベルにねぇし……」
「公式試合で使っといて何いってんだよ!なぁ、駄目か?」
「……そうだな、いくら部長の許可があっても今は駄目だ。今日も自主練で残るんだろ?俺いい練習場所知ってるから、そこでやろう。な?」
「今じゃないのかよ……まぁいいや、絶対だからな!」
「わかってるから」






・緑間
「……お、残ってるのは緑間だけか」
「皆ついさっき帰ったのだよ」
「そっか。本当努力家だよな、お前」
「当然なのだよ。常に人事をつくす。それすらの事もできずに天に選ばれようなど出来るはずがない」
「……本当、緑間のそういう所尊敬するよ。俺も見習わないとって、いつも思う」
「……小豆澤先輩はまだ帰らないのですか」
「ああ。俺ももう少しやってから帰ろうと思って。そうだ、ほいっこれやる」
「……おしるこ……?」
「好きだろ?それ」
「……俺がこれを貰う理由が解りません」
「最後まで残って練習してるから、俺からの労いと応援かな?」
「……」
「……それさ、実は間違えて買っちゃったんだよ。缶のおしるこ苦手だから、よかったら消費に協力してくれよ、な?」
「……解りました」



「小豆澤先輩」
「お?どうした緑間」
「これを」
「……シュノーケル」
「今日の山羊座のラッキーアイテムなのだよ」
「……もしかして俺に?」
「俺が物を見せびらかす人間にみえるのですか」
「いや、違ぇけど……ってか何で俺の星座知ってんの」
「チームメイトとの相性を調べておくのも人事を尽くすことに繋がるのだよ」
「……そうなのか。……うん、そっか、ありがとな」
「……借りを作るのが好きではないだけなのだよ」
「(ぺろっ、これは……デレ!)」






・桃井
「えーと、次はアズ先輩に……たしかこのクラス」
「アズーお前ってなんでアズなのー」
「俺だから」
「ひゅーそこにしびれる!憧れるぅ!!」
「どうも。……あ、やべぇ辞書忘れた」
「え?次の英語の?やばくね?とりあえず古典の辞書開いとけばばれねぇんじゃね」
「あの先生朗読中結構動き回るだろ……バレるとまずい。貸してくれ」
「何でだよ!俺がシメられるわ!!今日確か五組あたりも英語あったと思うぜ」
「まじかーんじゃぁ行ってくるわ」
「おう」
「……、あっ、アズ先輩!」
「ん?桃井……何でここに」
「あの、監督から連絡です!」
「ああ悪いな、上級生の廊下って来にくかっただろ」
「これくらいなんてことありませんよ」
「そっか、ありがとな?」
「いえいえ。……」
「どうした?」
「……その、少し、アズ先輩のイメージ変わりました」
「イメージ?」
「はい。普通に……ああいうじゃれあいもするんですね。ふふ」
「?あたりまえだろ」
「そうなんでしょうけど、いつも部活では厳しくて頼れる先輩なので、新鮮でつい」
「ふーん……?」
「ふふ、じゃあ私はこれで、失礼しますね。引き止めておいてなんですが、はやく行かないと休み時間終わってしまいますよ」
「おう、おつかれ」






・灰崎
「アズセンパイのジュースもーらいっ!」
「灰崎……またか」
「またっすよー」
「飲んでる途中にぶんどったら危ないだろうが……」
「そこ?なんでアズセンパイは怒んないんすかー?」
「怒るってか呆れてる」
「へぇー。海より深くて空より広い心はすごいっすねぇー」
「は?誰が言ってんだそれ。っつーか構って欲しいならそう言えよ。そんなんだから不評買ってばっかだろうがお前は」
「はー?構うとか何すか。俺は他人のモノ奪うのが趣味なだけ」
「それが構ってしぃっていってんだろ。羨ましいし、見て欲しいからちょっかいかける。幼児と何が違うんだ」
「……んだソレ、超ウザい。押し付け?」
「ウザいってよく紫原に言われるなぁ……まぁ余計なお世話だろうし面倒だったら無視してくれていいよ。寂しいけど」
「キモ。超キモい。あり得ねぇ。お前何なの?」
「おいそれ傷付く」
「傷付けよ。物理的に殴ってもいい。まじでウザい」
「……手足より口がでてる内ははだ大丈夫だっで、いっだ!!」
「ふざけんなお前なんて一瞬でコテンパンなんだよ死ねっ!」
「まじ、ってぇ……っか、腹パン……不意討ちで腹パンはねぇよ……っ」
「一生そこで蹲ってろ!」
「……、っは……行っちゃった……。……ムキになるのが一番の証拠だって、あいつわかってねぇの……?……、……お腹痛い、泣きそう」



「アズセンパーイ、茶ぁもらってんぜ」
「……、……あ、え?」
「うわ、何だよそのアホ面すっげぇウケるんだけど」
「お前昨日散々死ねだの這いつくばってろとか言ってなかったか?」
「這いつくばってろは言ってねぇだろ。それもいい気すっけど。いやぁ、あんだけオレのこと言うんだったら、構ってもらおうかと思って?嬉しいだろ?」
「……あっ、……うん、はい、そうだね?」
「何だよそのしょうがねーなって視線」
「いや……(つまり開き直ったってことですよね!)」






・紫原
「小豆澤……紫原本当なんとかしてくれ……」
「どうして俺に言うんですか部長……」
「俺にはお前しかいないんだ……!」
「ちょ、やめてくださいそういう茶番。……まぁ、はい。解りました。ちょっと説得してきます」
「本当か!恩に着る!!」
「いやそこまでの事でも……。あ、赤司。ちょっといいか」
「……はい」
「今から紫原にコートで菓子を食わないように説得しに行くんだが、ついてきてくれ」
「は?」
「お前紫原と仲いいだろ。大丈夫。そこに居るだけでいいから」
「……貸し一、ですよ?」



「紫原。一旦菓子を食うのを止めろ。……春から、コート内で菓子は食べるなと言っているな?」
「何ソレ。知らねーし」
「いいや、知ってるはずだ。……何も菓子を食うなといってる訳じゃない。休憩中に、コートの外で菓子屑をこぼさなければいい。ちゃんと我慢しろ、な?」
「はぁ?何勝手に決めてんの?うぜーし。捻り潰すよ?」
「……紫原。今日発売された大阪・京都限定まいう棒の味は?」
「食い倒れおいでませお好み焼き八つ橋味」
「……それが今、ここにある」
「……!?」
「欲しいか?」
「欲しい」
「欲しいなら……俺の言いたい事、解るよな?」
「……う、」
「これは大阪・京都限定。しかもゲーセン景品だ。数も極限られてる。これを逃すと手に入れられるか解らない。……さて、どうする?」
「う……あ、赤ちんー……」
「……」
「赤ちん……?」
「赤司も俺の意見に賛成だ」
「そんな……、赤ちん、ねぇ」
「……」
「紫原」
「……あーもう!わかったよ!コートではお菓子食べなけりゃいいんでしょ!」
「よくできました。……休憩中に、屑もこぼさないようにな」
「アンタ何様な訳!?まじムカつくんだけど!」
「普通のこと言ってるだけなんだけどな、まぁ敢えて言うなら先輩様ってことにしておいてくれ」
「そんなんどうでもいいからはやくまいう棒ちょうだい」
「ん……あぁ、もう休憩時間か。どうぞ」
「むー!」
「ボッキー食うか?抹茶味」
「……食う」
「よしよし」
「頭触んなし!」
「撫でてるだけだよ」



「ありがとな、赤司」
「本当に何もしてませんが」
「居るだけでも効果あるだろ、紫原にとっては」
「……。それにしても、よくそんなレアな味手に入れられましたね?」
「あぁ、知り合い多いって、いいよな?」
「……成程?」






・黒子
「二人でマジバ来るって初めてだよな」
「そうですね。ついてこようとする青峰君に桃井さんが気を使ってくれて助かりました」
「いつも思うけど、お前ら何だかんだて仲いいよな」
「そうですか?」
「誰にいっても否定されるか黙られるかだけど。赤司とか紫原とか含めて」
「……どうなんでしょう」
「一軍の一年のカラーズ。って事で括られるのが多いってのもあるだろうけど」
「……まぁ、紫原君はバスケ以外では話も合いますし、緑間君とも読書を通じてよく話をします。……灰崎君は僕のお弁当のおかずを横取りしていきますが」
「あー灰崎なー……」
「基本的に煩い以外は無害なので、僕としてはまぁいいかとも思っています」
「……そうだな……。───そうだ黒子。今日発売の新刊を買うのに本屋に付き合って欲しい」
「それくらいお安い御用です。読み終わったら僕にも貸して頂けませんか?」
「勿論。シェイク飲めたか?」
「はい」
「んじゃ、行くか」
「はい」






・赤司
「赤司ー、この後空いてるか?」
「……特にこれといった用事は有りませんが」
「なら、甘いもの好きか?」
「は?」
「この前の紫原の件。貸し一とかいってただろ?いい店知ってるから食いに行こうぜ」



「ここの餡蜜うまいんだよ」
「……確かに、悪くない」
「だろ?甘い物食うと疲れとれるしな。店の雰囲気も好きだし」
「そうですね」
「……なぁ、一年の纏め役みたいになってるけど、大丈夫か?」
「……何がですか?」
「……いや、赤司が大丈夫ならいい。……あんま無理すんなよ」
「言われなくとも。小豆澤先輩こそ、そろそろ胃に穴が開きそうだとか」
「……たまに誰が流してんのかわかんねぇ噂あるよな」
「火のない所に煙はたたないと言いますが?」
「わざとぼや起こしてる奴もいるんじゃねぇ?」
「最近灰崎にもまとわりつかれてますよね」
「あいつには別に困ってねぇよ。どこに物置いたか解んなくなるのはあれだけど。問題は紫原だな。お菓子で釣るような形になったし、それだと意味がない」
「……詰めは甘くともなんだかんだで先輩は飴と鞭の使い方上手いと思いますし、敦は心配ないとは思いますが」
「まじで?そう思う?」
「はい」
「赤司に言われると信頼感が半端ねぇ……そうか、ありがとな」
「……礼を言われる事なのか……?」
「何か言ったか?」
「いえ、何も。御馳走様です、先輩」
「こちらこそ、あの時は助かった」